アルミニウム合金について
アルミ鋳物は、鋳造(砂型鋳物、金型鋳物)とダイカストに二分され、例えばAC4Aであれば冒頭のAがアルミもしくはアルミ合金であること示し、次のC(Casting)が鋳造であることを示し、ADC12であれば冒頭のAから続くDC(Die Casting)の部分がダイカスト鋳物であることを示しています。
アルミは元来、鋳造のしやすい素材で熱処理により調質も可能なため、使用状況に応じた機械的性質のバリエーションが豊富な材料と言えます。耐熱性には劣るものの、鉄鋼材料の鋳造品に比べ、軽量化をはかることができます。またダイカストの場合は、大量生産が比較的容易で、この辺もアルミ合金のメリットとなっています。
アルミ合金の強み、メリット
製法による違いはあるものの、アルミ合金固有の性質として、軽い(鉄の3分の1)、比強度の強さ、加工性のよさ(切削や鋳造の双方に適合)、表面処理もしやすい(アルマイトなど)、低温脆性がない(鉄鋼系の材料は零下の気温では機械的性質がどんどんもろくなり、通常では壊れない温度でも破断することがある)、電気伝導性、熱伝導性がよい、非磁性(磁石の影響を受けてしまうと困るような部材によくマッチする)、リサイクルしやすい、入手しやすいといった点がこの材料を適用する場合のメリットとなります。
アルミ合金の展伸材と鋳物は違うもの
機械や構造材、部品などの材料としてアルミ合金が使われる場合、このアルミ鋳物(砂型鋳物、金型鋳物、ロストワックス)、アルミダイカスト、アルミ合金の展伸材(圧延材。機械的に延ばしたもの)のいずれかとなります。いずれも製法が違い、成分が似通っていても機械的性質などが異なる為、全く別のものと捉えたほうが間違いがありません。
一応、アルミ合金の展伸材における1000系、2000系、3000系、4000系、5000系、6000系、7000系などに対応する形でアルミ鋳物の合金系も存在しますが、機械的性質についてはかなり異なります。
製法によるアルミ鋳物の違いと特徴
アルミの鋳造にはいくつかの手法があり、それぞれに長所・短所があり、適宜使い分けられています。代表的なものは、砂型鋳物、金型鋳物、ロストワックス、ダイカストとなります。
砂型鋳物の特徴|メリット、デメリット
同じ鋳造技術であるダイカスト製法や金型鋳物に比べると、砂型鋳物は寸法精度が出にくいと言う問題がありますが、すべての鋳造技術のなかで、型費用がもっとも安くなると言うメリットの他、試作期間も短くすむため、短納期に対応しやすい製法です。
少量の試作品を繰り返し製作するような必要がある場合は、試作費用が積みあがってしまい、気が付くと結構な金額になっていることがありますが、こうした試作費用の低減に最も効果のある鋳物製法の一つと言えます。多品種少量生産に強い製法です。
また複雑形状についても対応可能で、型が毎回カスタムメードに近い形態のため、複雑な中子が組み込まれているようなものでも対応できます。ただアルミ合金の種類にもよりますが、部材の厚みが3mm以上は欲しいとされる製法の為、あまり精密な用途には向きません。もしくは鋳造後の追加工によって対応するという方法もありますが、寸法安定性や鋳造後の表面の肌もあまりよくないという欠点も踏まえておく必要があります。
砂型の場合、製作物の大きさがかなり大きなものであっても、対応できるため、この辺も金型やダイカストとは異なる特徴です。少量大物といった生産に向く砂型もあります。ただ、全般的に機械的強度が優先されるような場合は、他の鋳造技術のほうが有利です。
砂型の種類
砂型とは、名称が示す通り、主にけい砂で型を作る手法の一つです。砂型にもいくつか種類があり、代表的なものを挙げると次の通りです。
金型鋳造の特徴|メリット、デメリット
金型鋳造は、一般的に想像される「金型」を用いた鋳造技術です。砂型鋳物に比べると欠陥・不良が少ないというメリットや緻密で精細な鋳造組織を持ち、機械的強度でも優れた鋳物となります。また、熱処理によりさらに高強度な鋳物を得ることもできます。
一見するとダイカストにも似ていますが、ダイカストでは溶かしたアルミを高圧・高速で注入して成形していくのに対し、溶かしたアルミの重さだけで鋳造するのがこの金型鋳造の特徴です。このため、砂型には及ばないものの、ダイカストによりも鋳物の設計には自由度があります(中子の使用も可能)。ただし薄肉はアルミ合金の材種にもよりますが、5mm以上は必要とされるため、極薄の精密部品には対応しづらい製法です。
完成した鋳造品は、耐圧性能・機械的特性に優れたものになる為、砂型では強度が足りないようなケースでも便利です。鋳造後の、鋳肌(鋳造品の表面)の仕上がりも比較的きれいに上がります。寸法精度についても金型を使うため、よい部類です。また金型固有の事情として、冷却速度がはやくなるという点があり、生産効率にも影響してくる要素です。
ただ、金型には鋳鉄や耐熱合金が用いられますが、通常の金型と同様に、コスト・納期がかかるため、初期投資がかかる点、試作納期などがかかってしまう点などがデメリットです。中量生産以上の規模になれば、金型そのものを数千回から数万回使うことができる為、コストメリットも出てきますが、少量多品種には不向きな製法です。大物については、装置によって対応可能です。
なお、製造工程は砂型鋳造よりも短いというメリットがありますが、金型を製造するまでに時間がかかるため、試作などには分がありません。また金型ができたあとの製造工程(サイクル)についてはダイカストのほうが短い為、大量生産となった場合のコストはこちらが割高になります。